うまみキッチンコラム > ル・クルーゼの小さなお料理教室 Vol.4「ハーブとスパイスを知ると、食卓がもっと豊かになる!」
Vol.4テーマ「ハーブとスパイスを知ると、食卓がもっと豊かになる!」
普段お料理に何気なく使っているハーブやスパイス。お料理のおいしさ、その引き立て役として欠かせない存在ですね。
古代文明の時代には世界のあちこちでハーブを使った医療の記述が確認されており、紀元前1700年頃に書かれたパピルスの文書には、アロエなど約700種類ハーブが記録され、うがい薬や湿布などに使われていたとか。どうやらハーブやスパイスには、おいしさだけでなくいろんなチカラがありそう。今日はそんなハーブとスパイスを使った、からだにも気持ちにもうれしいレシピをご紹介いただきます。
さて、さっそくキッチンからは良い香りが漂ってきました。「小さなお料理教室」の始まりです!
【今回お料理してくださるシェフ】
Tasha Kumokawaさん TASHA TO HAZUKI 代表
(スパイス ハーブ検定2級/スパイス ハーブコンサルタント/メディカルハーブコーディネーター/JAMHA認定ハーバルセラピスト)
日本人の母と、アメリカ人の父を持ち大阪で生まれ育つ。幼少期をニューヨークで、高校~大学時代をハワイで過ごす。温暖な気候と大自然に恵まれた風土の中での自活自炊を通して料理の奥深さを知り、医師を目指しながら「食」を徹底独学。この頃、治療ではなく病気をしないからだづくり、からだのケアに目を向けるように。結婚し出産後、離乳食について考えることがきっかけでハーブ・スパイス研究の道へ。現在、大阪にてキッチンスタジオを併設したハーブ園「Tasha to Hazuki Garden」を営む。「『五味五感五色』の条件が揃えば、誰でも最高に美味しい料理をつくることができる」をテーマにした料理教室と、スパイス&ハーブ勉強会を開催している。Tasha to Hazuki 有機ハーブ&スパイス販売会社代表。
「ハーブとスパイス、なにが違うのかわかりますか?」
ハーブやスパイスと聞くとなんとなくのイメージしか思い浮かばないのですが、ハーブとスパイス、それぞれに違いはあるのでしょうか?
「じつはハーブとスパイスに厳密な区別はないんです。おおまかに言うと、ハーブは薬草で香りを伴う植物由来のもの。スパイスは香辛料であったり薬味であったり、芳香性や刺激を伴う植物由来のもの、と言えます。国によっても区別が違うのですが、アジアでは、「辛み」をもつもの、あるいは「種子」を使うものをスパイス、「葉」を使ったものをハーブと呼んだりしますね。ヨーロッパでは輸入しなければいけないもの、特殊な乾燥工程が必要なもの、たとえばシナモンとか黒胡椒などは「スパイス」、家庭で栽培できるものを「ハーブ」と呼んだりします。私の中ではどちらかといえばヨーロッパにおける整理の仕方にならっています」
今お話に出ましたけど、日本の薬味もハーブやスパイスの仲間なんですか?
「日本でハーブといえばハーブティー、スパイスといえばスパイスカレーなどがイメージされるかと思いますが、日本の薬味もハーブやスパイスの仲間ですね。たとえばバジルはシソ科なので大葉(シソの葉)の従兄弟のようなものです。日本ですと山葵や山椒、生姜などは「薬味」の言葉の通り料理に添えるイメージが強いかなと思いますが、海外ですと料理に使うほかに食材の保存などにもハーブやスパイスはよく使われます。食文化や気候など国によって環境が異なることからハーブやスパイスの役割は違うんですね。スパイスと聞くとどうしても辛味を連想してしまいますが、世界のハーブ、スパイスのなかで辛味成分を含むものは全体の1%に満たないんですよ。ですからスパイス料理といってもいろんな幅があるんです。」
Tashaさんがそんなハーブやスパイスを深く知ろうとしたきっかけはありますか?
「出産をきっかけに、離乳食に向き合ったとき子どもの口に入るものがとても気になるようになったんですね。関心がどんどん高まってハーブやスパイスの薬用、効能を学ぶようになりました。もともと医学を目指していたこともあり、病気の治療ではなく予防ということにおいてもハーブやスパイスを活用することは理にかなっていると思っています」
「ハーブにはそれぞれ薬用効果があるんです。タイムの効能は…」
今回は「焼きりんごとタイムのグリルチキン」をご紹介いただきます。ところで今回、なぜタイムというハーブを選ばれたのでしょうか?
「タイムはハーブの中でも抗菌作用が強いハーブです。サポニンという成分を多く含んでいて、このサポニンには抗酸化作用、免疫力向上、感染症予防効果が期待されています。
なので風邪などが流行っているこの季節にはタイムを使った料理はぴったりだと思うんですよ」
タイムにはそんな、免疫力を上げてくれるような薬用効果があると言われています。なんか寒い季節にぴったりな気がします。
「あと今回使わせていただく『シグニチャー ココット・ロンド』が新色で、「タイム」という色なんですって!ちょっと偶然ですけどぴったりかなと(笑)」
なるほど!さて今回のレシピのポイントは?
「お鍋にオリーブオイルを引いて鶏肉は皮目から焼きましょう。ちなみに加熱する料理ではエクストラバージンオイルではなく、普通のオリーブオイルが向いています。焼き始めたら、気になってしまう気持ちを抑えて(笑)触らずしばらくそのまま5分ほど焼きましょう。ハーブを加えるタイミングですが、今回はフレッシュなタイムの爽やかな香りが飛んでしまわないように、お鍋にりんごを加えるときに一緒にお鍋に入れます」
Tashaさん、今回は生のタイムを使われますが、乾燥させたタイムでも代用できますか?
「もちろんです。フレッシュハーブは新鮮な味や香りを楽しめますが、ドライハーブは成分がぎゅっと凝縮されているという利点があります。ハーブは乾燥させると水分が抜けて、体積が1/3程度にまで小さくなります。同じ量のフレッシュハーブと比べると、ドライハーブには約3倍の力が詰まっていると言えます。なので、ドライハーブをお使いになる時は、フレッシュハーブのレシピの1/3程度で代用できる、と覚えておくと良いかと思います。このあと白ワインとチキンストックを加えてオーブンに入れて焼いていきます。
ル・クルーゼなら蓋をしたお鍋ごとオーブンに入れられるので重宝しますね」
フレッシュなハーブは使いきれずに残してしまうこともありますけど、なにか良い保存方法はありますか?
「フレッシュなハーブを保存するなら、一輪挿しのようにお水を入れたグラスにハーブを活けて保存することがおすすめです。ハーブは乾燥が苦手なので夏場の冷房の効いた室内や冷蔵庫で保存する場合は、ポリ袋などをグラスの上から被せて冷蔵庫で保存すると長持ちしますよ」
「料理には色が大事。祖母から口グセのように言われました」
次はグリルチキンに合わせるソースですが、色がとても綺麗ですね。
「私は幼い頃から祖母に「いろんな色のものを食べなさい。5色は食べなさい」と言われて育ちましたが、いろんな色の素材をいただくことは大事かと思います。野菜などは色そのものに栄養があることもありますし、色はからだに働きかけてくれるからという祖母の言葉がずっと頭にあるんです。料理の世界にも〈五味五色(ごみごしょく・ごみごしき)〉という言葉がありますよね。今回はパセリとバジルを合わせたソースを用意しましょう」
※)〈五味五色(ごみごしょく・ごみごしき)〉日本でいう五味は、甘味・塩味・苦味・酸味・旨味。五色は、赤、黄、青(緑)、白、黒を指します。
「フレッシュバジルとフレッシュパセリ、そのほかの調味料をハンドブレンダーでスムーズになるまで攪拌(かくはん)したら出来上がり。ね、簡単でしょ?今日はチキンに合わせますが、魚料理にも、野菜ドレッシングの代わりにも使えてとても便利なんですよ。早めに召し上がったほうが良いですが、冷蔵庫で保存すると3日ほど持ちます」
「ココット・エブリィなら、サフランライスもふっくらと仕上がりますね」
Tashaさん、サフランってどんなスパイスなんでしょう?
「サフランはサフランの花の雌しべを乾燥させたスパイスです。10gのサフランを得るには1500本以上の花が必要で、摘み取りからすべてが手作業で行われるため高価なスパイスです。サフランはひとつまみで料理を鮮やかな黄色に染めてくれます。パエリアやブイヤベースに使われることでご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか?今日はせっかくココット・エブリィを使えるのでサフランライスをご紹介します。」
サフランは使う前に水に浸しておくんですか?
「その通り、十分にお水に浸してそのお水を使ってご飯を炊きます。サフランは水溶性のスパイスなので、独特の風味や色が水に溶け出すんですね。ですのでサフランの風味や色は油には溶け出しません。たとえばパプリカの赤い色は脂溶性ですのでオイル煮にすると赤い色が溶け出します」
「ハーブとスパイスのことが、少し身近に感じられるようになりました」
焼き上がったグリルチキンに、炊き上がったサフランライス。キッチンはもうハーブとスパイスの良い香りで満ちています。ワンプレートにサーブされた料理をテーブルに並べて、お待ちかねの試食です!香ばしく焼けた鶏肉にりんごの酸味、そしてタイムの風味にしばし会話が途切れます。サフランライスの鮮やかな黄色、そしてソースの緑色に「料理には色が大事」とおっしゃったTashaさんの言葉の意味を改めて感じます。おいしさは目でも味わうものなんですね。お料理をいただいている間にも、いろんな質問がありました。Tashaさん、この時期におすすめのハーブを使ったレシピ、ほかにはどんなものがあるでしょう?
「寒い時期に取り入れたいハーブやスパイスを使ったレシピというと、まずはジャーマンカモミールを使ったハーブティーでしょうか。ジャーマンカモミールには胃腸の調子を整える働きとともにからだを温めることから、寝る前に飲むとポカポカ暖まりますよ。風邪のひき始めのときにもおすすめです」
今回はハーブとスパイスを身近に感じられる「小さなお料理教室」でした。参加された方々の感想を伺いました。
「ハーブやスパイスは苦い印象がありましたが、〈五味〉を意識することで料理がおいしくなることに気がつきました」
「保存方法を知れて良かった。いつも使いきれずもったいないと思っていたので」
「ドライハーブを使うときはフレッシュハーブレシピの1/3なんですね」
「手が出しにくいと思ってましたが、これからチャレンジしてみたいな」
「五感を刺激してくれるもの、それが豊かな食卓なのかな」
ところでTashaさんが考える「豊かな食卓」とは、どんなイメージですか?
「そうですね、「豊かな食卓」とは、五感を刺激するものかなと思いますね。
記憶に残る料理って、食材の味と香り以外に、
盛り付け方や使われた器、場所や時間や、流れていた音楽、
誰と一緒に食べたとか、どんな会話をしたとか。
五感を刺激した料理って情景とともに思い出すんですよね。
それこそが「豊かな食卓」だと思います。
「食べる」と言う行為は生きるために必要不可欠なものであり
身体を強化する事も出来れば、ゆっくり滅ぼす事も出来る。
同じ「食べる」なら
鮮度の良い彩豊かな食材を美味しく調理して、
テーブルも綺麗にセッティングして、
心地いい音楽をかけて。
大切な人達と一緒に「美味しいね」って笑いながら
「豊かな食卓」を生きている間になるべく数多く演出したいですね」
Recipe1.焼きりんごとタイムのグリルチキン
材料(約4~5人分)
- 鶏もも肉:600g
- 塩:大さじ1
- こしょう:小さじ2
- 鶏肉シーズニング:大さじ2…市販の塩味調味料(ハーブやスパイスを加えた岩塩)などで代用可
- オリーブオイル:1/2カップ
- 玉ねぎ:1個 小ぶり くし切り
- りんご : 1個 小ぶり 1/4カット
- フレッシュタイム:1束
- 白ワイン:1カップ
- チキンストック:1/2カップ…チキンコンソメでも代用可
鶏肉シーズニング…食塩や砂糖などの調味料とスパイス&ハーブがブレンドされたもの。
作り方
- オーブンを120℃に予熱する。
- 鶏もも肉の水分をキッチンペーパーで拭き取る。
- 塩こしょうと鶏肉シーズニングをチキンに揉み込む。
- お鍋にオリーブオイルを入れて中火で加熱し、温まったら鶏肉を皮を下にして入れ、約5分焼く。
- 鶏肉を焦げ付く手前まで両面をよく焼いたら、いったん取り出し玉ねぎを入れる。玉ねぎの両面をしっかり焼き色が着くまで焼く。
- りんごとフレッシュタイムを入れ、りんごに焼き色が着くまで約5分ほど焼く。
- 白ワインをゆっくり足して沸騰させ、白ワインが半分ほど減ったらチキンストックを加えて約5分ほど煮立てる。
- 鶏肉をお鍋に戻し、蓋をしてお鍋ごとオーブンに入れて120℃で約10~15分焼く。
※チキンの中の温度が75℃になると完成
Recipe2.ハーブの GREEN GODDESS ソース
材料
- フレッシュパセリ:1/2 カップ
- フレッシュバジル:1/2 カップ
- にんにく:2片
- オニオンパウダー:小さじ1/4
- はちみつ:大さじ1
- 塩:小さじ1/2
- こしょう:小さじ 1/4
- 白ワインビネガー:大さじ4
- エクストラバージンオリーブオイル:大さじ2
- 水:大さじ1
作り方
- 材料をすべてブレンダーに入れてスムーズになるまで攪拌(かくはん)する。
- 必要に応じて水と塩こしょうを足す。
※容器に移して冷蔵庫保存すると、にんにくの辛味が和らぎます。
Recipe3.サフランライス
材料(約4人分)
- お米:2合
- サフラン:ひとつまみ
- バター:20g
- ターメリック:小さじ1
- にんにく:1片
- 玉ねぎ:1/2個
- サフラン塩:小さじ1…塩でも代用可
- チキンストック:500ml
作り方
- お米を洗っておく。
- サフランを少量の水に入れて置いておく。
- お鍋にバターを入れて中火で溶かし、ターメリック、みじん切りにしたにんにく、玉ねぎ、サフラン塩を入れて炒める。しんなりしたら、お米を足して焼き色がつくまで炒める。
- チキンストックと水にいれたサフランをそのまま一緒に入れて蓋をし、沸騰したら、弱火にして水気がなくなるまで炊く。(約10〜15分)
- 水気がなくなったら火から外し、蓋をしたまま10分ほど蒸らして完成。
消化をサポートするハーブティー
レモンバーム
消化器系の不調や消化不良を和らげ、胃の調子を整えてくれます。
風邪の時にレモンバームのハーブティーを飲むと発汗を促進し体温を下げ、
毒素の排出を助けてくれます。
ジャスミン
ジャスミンの花には鎮静作用があり、高ぶった気持ちを静めてくれるのと
反対に落ち込んでいる時は気分を高揚させる作用もあります。
ラベンダー
ストレスでこわばった心身をリラックスさせ、不安、緊張、イライラを和らげて
緊張からくる偏頭痛や高血圧にも効果があるといわれています。
タイム
去痰(きょたん)作用や鎮痙(ちんけい)作用があり、気管支炎やぜんそく、咳などの症状を緩和し、
心身の疲労回復や不安・抑うつ状態の改善などに役立つといわれています。
今回使用したお鍋
今回ご協力頂いたお店
Tasha to Hazuki Garden
古い日本家屋をリノベーションし2022年11月にオープン。
テーマは「大阪下町の住宅街にひっそり佇むオアシス」。エントランスの通路から緑のトンネルを抜けるとそこに広がるのはハーブ園。アトリエ内は業務用設備が整ったキッチンも備えられています。定期的にハーブのワークショップイベント、お料理教室を開催しております。(詳細はカレンダーおよびInstagramをご確認ください)
小規模なパーティー、女子会、撮影スペースレンタルも可能です。
住所:〒546-0021 大阪市東住吉区照ヶ丘矢田2-9-4