うまみキッチンコラム > Vol.5テーマ「南カリフォルニア風、新しい感性が魅せるシーフードレシピ」
Vol.5テーマ「南カリフォルニア風、新しい感性が魅せるシーフードレシピ」
突然ですが、海外から日本を訪れる訪日客は年間どれくらいか、ご存知ですか?政府観光局の推計によると、2023年1月から11月にかけては累計なんと2233万人。コロナ禍以降4年ぶりに年間2000万人を超えたということです※。
訪日客が増えるにつれて、彼らの間で話題になるお店も増えてきました。
今日は、東京の代官山にある人気のレストランを営むシェフに、南カリフォルニアを感じるお料理をご紹介いただきます。
人気の秘密は自慢のシーフード料理にあるようです。
お店のドアを開けると、キッチンに立つシェフが出迎えてくれました。
※訪日外客数(2023年11月推計値)日本政府観光局資料より
【今回お料理してくださるシェフ】
Lui Shirakoさん
毎夜、大勢のお客さまで賑わうシーフードレストラン〈CEDROS(シドロス)〉を切り盛りされているShirakoさん。店名は長く暮らしていたカリフォルニア州サンディエゴにあるストリート名だそうです。お店では海に近いその地をイメージし、シーフードを中心としたお料理(カリフォルニア・キュイジーヌ)を提供されています。
「自分たちを育ててくれたサンディエゴが感じられるおいしさを」
お店に入ってまず目に飛び込んでくるのは、厨房の天井から吊り下げられた大きなマグロのオブジェ。店内はShirakoさんの趣味が至る所に見え隠れしています。
「僕は魚が本当に好きで。このマグロのオブジェは友人が端材を活用してつくってくれた一点ものなんです。大きいでしょう?(笑)僕は釣りが趣味で、サンディエゴで暮らしていた頃は釣具店でアルバイトをしていたこともあり、自分の好きな料理と趣味の釣りを足したものが、いまのお店のコンセプトになった感じでしょうか。あと、これは関係あるのかないのかわかりませんが、僕の先祖は代々、築地でマグロの卸売を商っていたんですよ。まあ、魚好きの血は受け継いでいるのかな」
「もともと漁師たちが愛した料理、それがチョッピーノなんです」
今回のレシピ「チョッピーノ」は、どんなお料理ですか?
「今日は僕も愛用しているル・クルーゼを活用したレシピですので、南カリフォルニアらしい海鮮を使ったシチューをご紹介したいなと思います。チョッピーノはサンフランシスコ発祥の漁師料理です。前菜ではなくメインでサーブする料理なんですけど、日本の海鮮鍋のようなお料理でしょうか。1800年代後半からイタリアの移民漁師たちがつくっていたと言われていますが、今も現地で愛されるトマトソースをベースにした海鮮シチューになります。サンディエゴでもシーフードレストランやイタリア料理店でよく食べられているメニューですね。じゃあ、さっそく料理しますか」
カウンターに座ったゲストに、まずは今日のメイン素材となる下処理された魚介を見てもらうShirakoさん。これは期待感が高まります。
「今日使う魚介類はこんな感じですが、ご家庭でつくるなら材料のレシピにあまりこだわらなくて良いと思います。その日にスーパーで買える素材で十分ですよ。それでは、ベースからつくっていきますね。玉ねぎとセロリをまずはしなやかになるまでバターとオリーブオイルで炒めていきます。ニンニクは焦げやすいので玉ねぎとセロリの後に入れましょう。野菜を炒めるとき使うオリーブオイルはピュアオイルを使います。エキストラバージンオイルを使う料理は、その風味を活かしたいときに向いています」
ハーブを加えたベースがどんな風味なのか、ちょっと味見してみますか?と、小さな片口に入れたベースをみんなで味見してみると…
「この状態でけっこう旨味やコクが出ていますよね?ここから、トマトペーストを加えてさらに馴染ませていきますね」
ベースに加えるのは白ワインと思いきや、ドライベルモット(ハーブワイン)。
「白ワインでも良いのですが酸味が立ちやすいので、僕はドライベルモットを使います。こっちのほうがまろやかですから。ル・クルーゼの鍋の中に加えてアルコールを飛ばしたらクラムジュースとトマト缶を加えます。クラムジュースが手に入らない時はお水で良いですよ」
Shirakoさんは、トマト缶のトマトを手で潰しています。そっちのほうがおいしく仕上がるのですか?
「フードプロセッサー使っても良いんです。でも、手で潰せばお鍋ひとつで調理できます。洗い物も少なくなりますよね。ご家庭ではそんなことも料理の時は大事じゃないですか?」
おお、なるほど。確かに家庭のキッチンはレストランのように広くないですし、勉強になります!
「このあと弱火で煮込みますが、ここがル・クルーゼの強みが発揮されるところですね。僕も自宅でル・クルーゼのお世話になっているんですが、熱を逃さないですし料理が冷めにくい。それと均等に火が通るため上手に仕上がりますね。チョッピーノのような煮込み料理には最適だと思います。我が家ではボロネーゼやトマトソース、カレーなどでも大活躍ですよ」
「爽やかなドレッシングの効いたサラダを、魚のグリルに合わせたワンプレートです」
チョッピーノを煮込んでいる間に、次の一品にかかるShirakoさん。
「チョッピーノが煮込むお料理なので、海鮮のグリルを合わせてみようかと。このお料理はグリルしたサーモンに、ギリシャ風サラダを載せると完成。そうなんです、結構簡単につくれますよ。フェタチーズとオリーブにトマトを組み合わせたギリシャ風サラダは、南カリフォルニアでもよく食べられるのですが、おいしくてヘルシーですからぜひ作り方をシェアしたいなと」
サラダに使う野菜とフェタチーズは小さなサイコロ状、ダイスカットされています。フェタチーズはギリシャ料理には欠かせない、羊の乳でつくったチーズですね。
「グリルしたサーモンと一緒に召し上がっていただけるように、サラダがソースの代わりになるような感覚でしょうか。僕はギリシャ料理が好きでして。ヘルシーですからね。まずはドレッシングからつくっていきますね」
Shirakoさん、蓋付のガラス瓶にドレッシングの材料を入れ始めました。
「ドレッシングの作り方は、材料をすべて瓶に入れて、蓋をしてシェイクするだけ。こうすると、残ったドレッシングも日持ちしやすいですし、洗い物も、少なくて済むでしょう?(笑)サラダが整ったら冷蔵庫に入れておきますが、まずはサラダだけで味見してください」
ということで、またお味見タイム。爽やかなドレッシングに小さな野菜とチーズの口当たりが食欲をそそります。さて、オーブンを190℃に設定して、サーモンの準備です。
「サーモンは片面に塩胡椒をして5分ほど寝かせます。ル・クルーゼの鍋に軽くオリーブオイルをひき、玉ねぎスライス、レモンスライスの順に敷きます。この上に、皮目を下にしてサーモンを並べましょう。あとはオーブンで12〜15分ほど焼き上げます。焼き上がったらギリシャ風サラダを乗せて、ドレッシングで仕上げます」
「このおいしさ、すぐ真似してみたくなっちゃいますね」
グリルが出来上がる間際、チョッピーノのお鍋に魚介類を加えます。
「魚介類はほんの5分くらい煮込めば良いかなと。アサリなどの貝類の殻が開けばそろそろです。魚介にも塩気がありますから、煮込む前から味を決めずに、この段階で味を見て整えていただければ出来上がりです」
焼き上がったサーモンにギリシャ風サラダを乗せたプレート。そして、今まさに仕上がったチョッピーノをよそったボウルが目の前にサーブされました。ハーブが薫るサラダをまとった香ばしいサーモンは、意外にも軽い食べ心地。ゲストを驚かせて、楽しませようというシェフの心意気、伝わってきました。
「今日はル・クルーゼを使ってグリルしたので、焼き上がりがとてもよくできたかな。火の入りが良かったから、思ったよりも早く仕上がりましたね」
さあ、チョッピーノです。口の中に押し寄せてくるトマトソースと魚介の旨味に、みなさん圧倒された様子。海に面した土地ならではの醍醐味を感じると同時に、移民された漁師さんたちの故郷、イタリア料理を思い起こさせます。これ、アメリカ料理なんですか?そんな質問が出るのも無理ありません。みなさん、Shirakoさんのお料理、いかがでしたか?
「メインの魚介を見せられた時は贅沢な感じがしましたが、材料は自由で良いよと。スーパーで買えるものでもできるんだよとおっしゃっていただいて、うれしくなって真似してみたくなりました」
「料理のコツだけじゃなく、洗い物は少ない方がうれしいですよねとか、シェフからおっしゃってもらえるなんて。主婦のことよくわかっているんだと」
「シェフのルーツを感じるお料理。サンディエゴに行ってみたい」
「サラダを魚料理のソース感覚で盛り付けるなんて新しい!」
「お料理のプロセスを目だけでなく、ちゃんと味見させていただけたので舌で覚えることができました」
今回は南カリフォルニアを感じる「ル・クルーゼキッチン」でした。
「料理は自分らしく、自分の感性を大事にしたい」
ところでShirakoさんが考える「豊かな食卓」とは、どんなイメージですか?
「僕は海外での生活が長かったこともあって、日本の良いところも、海外の良いところも経験しています。豊かさっていろんな尺度があると思うんですけど、なんでも「こうしなければならない」と考えるよりも「自分らしく」を大事にしたいんですね。料理も同じように考えています。例えば今日のレシピにしても、同じ食材が手に入らなければ、手に入る食材でつくって良いと思うんですね。型通りじゃなくて良いと思うんです。そこから、「自分らしさ」みたいなことが生まれて、それぞれのご家庭の食卓が豊かなものになっていく。そんなイメージを抱いています。あとは、愛情(笑)。豊かな食卓には愛情が載っていると思いますね」
Recipe1.チョッピーノ
材料(4~5人分)
〈トマトソース〉
- オリーブオイル 大さじ3
- バター(無塩) 約80g
- ニンニク(みじん切り) 4片
- イタリアンパセリ(またはパセリ)(みじん切り) 少々
- 玉ねぎ(みじん切り) 2個
- セロリ(みじん切り) 1本
- トマト缶(ホールまたはカット) 2缶(800g)*ホールの場合は手で潰す。
- トマトペースト 大さじ2
- クラムジュース(または水) 500ml
- ドライベルモット(または白ワイン) 200ml
- ローリエ 2枚
- ドライオレガノ 小さじ1
- フレッシュタイム 4~5本
- 唐辛子(粗みじん切り) 小さじ1/2
- 塩 適量
- 砂糖 適量
〈魚介類〉
お好みで選んでください。おすすめは最低4種類ぐらい。
量はあくまでも目安で全種類入れる必要はありません。
- エビ 200〜300g
- イカ 200〜300g
- カニ 200〜500g
- ホタテ 200〜300g
- サーモンまたは白身魚 200〜300g
- あさり (殻つき) 10〜12粒
- ムール貝 10〜12粒
作り方
- バターとオリーブオイルを鍋に入れ中火にかける。
- バターが溶けたら、玉ねぎ、セロリ、ニンニク、パセリ、タイム、ローリエ、塩ひとつまみを入れしなやかになるまで炒める。
- ドライオレガノと唐辛子を入れ香りが立つまで炒め、トマトペーストを入れてさらに炒めて馴染ませる。*焦がさないように気をつけてください。
- ドライベルモットを入れアルコールを飛ばし、クラムジュースとトマト缶を汁ごと入れる。塩と、酸味が強い場合は砂糖で味を調える。*魚介類にも塩分が含まれているのでここで味を完全には決めないでください。
- 20~30分ほど蓋をして弱火で煮込む。*焦げないようにたまに混ぜてください。
- お好みの魚介類を5に入れ蓋をし、5分ほど煮込み、塩や砂糖で味を整えたら出来上がりです。
*貝が開いたら出来上がりの目安です。
Recipe2.ギリシャ風サーモンのオーブン焼き
材料(3〜4人分)
- サーモン(3〜4cmくらいの厚みのもの) 3~4切れ
- 赤玉ねぎ(5mmのスライス) 1個
- レモン(スライス) 1個分
- 塩、胡椒 少々
- オリーブオイル 少々
- ドライベルモットまたは白ワイン 少々
- エキストラバージンオリーブオイル 少々
〈ギリシャ風サラダ〉
- フェタチーズ(キューブカット) 200g
- ミニトマト(横半分にカット) 8~10個
- ブラックオリーブ(スライス) 約30g
- きゅうり(ダイスカット) 1本
- 緑パプリカ(ダイスカット) 1/2個 (またはピーマン 1〜2個)
- 赤玉ねぎ(ダイスカット) 1/4個
〈ギリシャ風ドレッシング〉
- ニンニク(細かいみじん切り) 1片
- エキストラバージンオリーブオイル 120ml
- 赤ワインビネガー 大さじ 3
- レモン汁 大さじ1
- ディジョンマスタード 小さじ1
- ドライオレガノ 小さじ1
- ディル(みじん切り) 少々
- 砂糖 小さじ1
- 塩 適量
- 胡椒 適量
作り方
- ギリシャ風ドレッシングの全部の材料を蓋付きの容器に入れ振って混ぜる。
- ボウルにギリシア風サラダの材料をすべて入れ、ドレッシングで混ぜ合わせ味を整えたらサラダの出来上がり。冷蔵庫で保管する。
- オーブンを190℃に予熱する。
- サーモンを常温に戻し、片面に塩と胡椒をして5分ぐらい置く。
- お鍋にオリーブオイルをひき玉ねぎを散りばめ、その上にレモンを並べてサーモンを置く。軽くドライベルモットまたは白ワインをかけ、オリーブオイルも少々かける。
- 5をオーブンで12分〜15分焼く。
- 焼きあがったサーモンの上に2のサラダを散りばめエキストラバージンオリーブオイルを少々かける。 お好みで余ったディルをのせる。
今回使用したお鍋
今回ご協力頂いたお店
CEDROS
〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-32-3 Tradgard代官山D
店の名前の由来はご兄弟が育ったカリフォルニア州、ソラナビーチにあるストリート名です。カフェ、アンティークショップ、ライブハウス等が並ぶ小さなビーチタウンの雰囲気を基調としたシーフードレストランです。
「サンディエゴを知らない人たちにも、もちろん行ったことがある人たちにも、サンディエゴやカリフォルニア州、メキシコの良さを伝えたり思い出話ができる場所にしたいと考えております」
新鮮な魚介料理とおいしいニューワールドワインが楽しめるお店です。
営業時間:火曜日〜土曜日 18:00 – 22:30(素材がなくなり次第終了する場合があります)
定休日:日曜日・月曜日・祝日